りちお先生の小話

消えた大四喜

 今でこそ真面目に麻雀に取り組んでいる私ですが、初めの集まりは牌を並べる程度の仲間内で、ある意味激しく熱く、そして楽しく戦っていました。
 行きつけの雀荘を貸し切り、半ば麻雀チームと化した職場の先輩後輩入り乱れての麻雀大会。ある時、普段負けることの多い後輩のMが体を震わせながら、字牌の東と南と北をポンしました。
 それに対して後輩に舐められてはいけないと、そこに確定の西を叩きつけた先輩のH。そしてそれもポン。大四喜の確定で、アガってもいないのに喜ぶ後輩Mに対し、逆にショックでうなだれる先輩H。すると、その時に「万歳!」と両手を挙げたMの動きが一瞬止まりました。そして手牌を何度も何度も見直して、そして一言。

「あれ~? これ切ったら俺の手牌なくなるよね……」

 なんと彼は役満気配の興奮のあまり、大四喜確定まで少牌に気付いていなかったのです。なので、当然捨て牌を完了してしまうと、手牌はなくなり、大四喜はアガれず。

 呆然とするMはその後、パオを確定させた先輩Hからオートツモ切りの刑にあってしまいました。

踊る四暗刻

 仲間内で、興奮すると立ち上がって踊りながらリーチをかけるというN君がいました。何せ社会人ばかりなので仕事終わりの徹夜麻雀ですから、脳内麻薬(エンドルフィン)も出てきて皆が面白いテンションに変わってきます。
 そんな彼は負けてばかりなのですが、その日はトントン拍子で2回トップを取って調子がいい。その上、東2局の親でツモり四暗刻のテンパイが入りました。もちろん深夜ですし、急に立ち上がっていつもよりさらに興奮しながら白鳥の湖を踊りだすN。ひとしきり踊り終わった後、白鳥が加えた宣言牌が天高く飛び、卓に舞い降ります。

 「リ──────チィィィィ!!」

 ところが、当然といえば当然なんですが、打牌の打牌の力量があまりにも強かったため、打牌宣言と同時にその卓の牌という牌が倒壊しました。しかも悲しいかな、自山に置かれた次のツモがごろりと見えて一発アガリ。
 満貫の罰符を払って、上下6万点の踊りを踊った勇気を皆で讃えましたが、その日の全員の夜食と朝食は全て彼の奢りという結果になりました。

呪われない九連宝燈

 ある日の対局、私が後ろで見ていた時に職場のリーダー的な存在の先輩Hが高らかにロンの発声をしました。
 「ローン!! カン六万でメンチン!!」
 その牌姿がこうでした。

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 後ろで見ていた私が驚きのそのアガリに目を見張る中、まだハネ満の点数を貰おうとするH。その出現が希薄なあまりに呪われるとまで言われた伝説のアガリが、ハネ満では余りに可哀相なので、
 「おーい、それはメンチンだけじゃないよ」
 と助け舟を出すと、指を口に咥えて悩むH。
 そして彼が悩みに悩んで発した、信じられない言葉。

 「……一通?」

 おそらくこの人はその後も一生、九連宝燈の呪いとは無縁の生活を送るんだろうなと思いました。

流し国士無双

る時、そのハマりキャラの彼がついに流し満貫に成功しました。諸手を挙げて8000点を回収していると、15巡目までの捨て牌が、

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 と、明らかに国士無双をアガっています。本人の喜びに水を差すのも悪いと思いつつ、捨て牌の国士無双が先だと私が指摘すると、思わず頭を抱えて天を仰ぐお馬鹿なOでした。
 しかしお馬鹿は懲りないものですね。その数ヵ月後にまたも流し満貫を成功させた彼。しかもその時は最終打牌に自分で気付いて叫びだしました。

 「あ────っ、俺また国士無双あがってるやん!!」

 もちろん下家はその時に流し満貫に気付いてギリギリのところでチー。
 役満をアガリ逃すは、満貫は阻止されるは、踏んだり蹴ったりのOは一同大爆笑の的でした。

必ずアガれるスーカンツ

 当時から仲間内でルール管理をさせられていた私でしたが、さすがに徹マンともなると眠たくて椅子でうたた寝してしまいます。ある時、仕事の疲れもあってか数時間寝入ってしまうと、朝を迎えてしまいました。その夜、大勝ちしたのはKで、なんでもスーカンツをアガったとか。

 あまりに珍しいアガリでしたので詳しく話を聞いてみると、

 「いやー、俺も興奮したわ。でも、もうその時タンキ待ちでアガリが確定しとったからな」


 「確定」という不思議な響きに目を丸くする私。最後のリンシャンでも捲れたのかと思いましたが、仲間の話を聞けばこういう事でした。

 Kが三槓目の状態で嶺上牌は普通は残り1枚。しかし、なぜかこの時は0枚になっており、嶺上牌がなかった。その状況で最後にKが興奮気味に大明カンして叫んだセリフが「よっしゃ、狙い通り!! スーカンツのアガリ確定や!!」

 どういう事かというと、彼らは四カン流れのルールを知らなかったのです。場ではもう一人がカンをしていたのにも関わらず、ゲームを続行していたのでした。だから、なんとカンしてKが掴んだのは嶺上牌ではなく、もろドラ表字牌。

 そりゃツモる牌が事前に分かっていたら四槓子もアガれますよね。この時から私はお馬鹿な仲間たちの為になるべく居眠りをせず監視してあげなくては、と思いました。

チー和チャンス

 お馬鹿な集まりはついに珍しい役をテンパイすると自慢したくなるみたいですね。この時は以前に呪われない九蓮をアガッたHが声高らかに「配牌からテンパイしてる。地和チャンスだ!!」と叫びだしました。
 しかし、当然のことなのですが、普段の意地悪に対する復讐とばかりに上家の先輩Mが地和を阻止するためにチーをしてしまいました。
 「テンパイ公表するからやろ」と一同大爆笑すると、くらくらになってしまうH。しかもリーチをかけずにいると、すぐの下家のツモ切りをロン。「……ピンフのみ」
 その時は本当に地和だったのですから驚きです。しかもHはショックのあまりリーチもかけれずに1000点のアガリなので、まさに天和国から地和獄。麻雀はタイミングひとつで、これほどにアガリの価値が変わるのだから面白いですね。
 しかし一年後くらいにまさかそのHから再び同じ台詞が出るとは……。


 「配牌からテンパイしてる。地和チャンスや!!」


 だから、なぜお馬鹿は同じ間違いを繰り返すのかな?(苦笑) 今度は結果的にアガってはいませんでしたが、再びしっかりMに阻止チーをされていました。まさに地和宣言は「チー報チャンス」かな。

清老頭よりも嬉しいアガリ

 これも後ろで見ていた出来事なのですが、Kが老頭牌を三つ鳴いて九万単騎の清老頭をテンパイしていました。
 この時、のんきにもMからリーチが入って、Kがすぐに引かされたのがドラの④ピン。たしかにそのリーチに対して、ドラの④ピンは切り辛い牌ですが、何せこちらは役満なのですから、ここは当然目を瞑っていくべきでしょう。
 ところが、こういう素人たちほど思い込みがやたら強いんですね。何を思ってかその時、「見切った!!」とばかりに④ピンを抑えて打九万。そして続けて切り出される九万ツモ切りに、後ろで見ていた私も思わずもったいないと肩を落としました。
 そして数巡後にドラまでツモって高らかに満貫をあがるK。どうやら危険牌を抑え切ってアガれたことがとても嬉しいらしく、自慢気にリーチ者に対して待ちを抑えただろうと自慢していました。
 結果的にですが、リーチ者にはドラは通っていましたし、役満をアガリ逃している訳なのですが、本人の満足そうな笑みを眺めると、探せばこの世には役満より嬉しいアガリもあるいという訳ですねえ。

緑一色≒ホンイツ

 以前、九蓮宝燈をアガったHがソウズのホンイツに走って、門前でこんな手牌になっていました。

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 役満の神様は楽しく麻雀を打つ人が大好きみたいですね。どうなることかと微笑ましく見守っていると、彼の打ち方の解答は私には想像もできませんでした。 まずここから5ソウをチー!(後ろで激昂する私)
 そして再びすぐの5ソウをチー!!(後ろで激痛走る私)
 そして最後は対面から2ソウをロン!!!(後ろで撃沈する私)

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 かなりフラフラになりながらも私は探求者として、なぜ3万点ゲットを放棄するチーをしたか尋ねてみました。すると、その答えは……

 「え? 緑一色って役満なん??」

 どうやらホンイツのおまけみたいに考えていたらしく、全く無頓着だった。
 役満の神様はどうしてこんな奴らばかりに舞い降りるのかと、一生を捧げて研究してみようかなと真剣に考えるほどでした。

天和宣言はアガリ放棄

 仲間内で私はいつも後ろから観察しているのですが、その理由のひとつとしてお馬鹿な仲間たちからあまりお金をいただくと申し訳ないという(失礼な)気持ちと、ミラクルすぎて後ろで見ている方が楽しかったからですね。そしていつしか私が審判のような立場になり、だいぶ対局のマナーもよくなってきました。
 しかし、お馬鹿な仲間は気が付くと新しい遊びを思いつくもので、ある時、親が回ってくる度に天和宣言をやるというのが流行りました。

 「この配牌は絶対天和やで……ほら来た、アガってる。天和や」

 と言って、第一打を切り出す訳ですから、完全な誤ツモ発声ですよね。初めは冗談で通していましたが、一局で四回もHがやった時には「それは完全な誤ツモ発声だから、次言ったら罰符取るよ」と警告すると、やっぱり言いたいんでしょうね。「これは天……むぐぐ、何でもない」と、何度か天和宣言が出そうになっているのには苦笑しました。
 当時の集まりを考えれば、もう少し優しくしてあげてもよかったかもしれませんね。今はもう打つことのできない、マナーは悪かったけどどこか暖かみのある、お馬鹿なサロン麻雀のお話でした。

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